2020年10月26日
長靴の銀行員
農業未経験の私たちが、「素人だからこそ気付く課題があるはず」と、手始めに1棟のビニールハウスを自分たちで建てることを決意。結果として多くの人々の協力を得て、約2週間かけて無事完成した。建設作業の大変さや技術の未熟さはさて置き、莫大な投資金額や自前で附帯工事(排水のための盛土など)を行う必要性に直面し、新規就農者には1棟のハウスを建てることすら大変だということを痛感した。
そして10月末、いよいよ初めての定植。わさびは機械化が進んでおらず、すべて手作業で植え付ける。会社設立後、様々な課題に直面しながらも、多くの方々の支えによって、ようやくこの日を迎えられたことに安堵したのも束の間、「この工程は本当に必要なのか」、「別の方法で代替できないか」等、素人だからこそ、銀行員だからこその着眼点を生かし、生産性の向上ひいては農業の収益性向上にチャレンジし続ける。
数か月前までスーツに革靴だった銀行員が、作業着に長靴で農作業をしている姿は我ながら新鮮だが、案外戸惑いはない。ただ、「農業のイメージを変えたい」という思いで、作業着のデザインにはこだわり、会社のユニフォームとして特別に制作したものを着用している。
銀行員時代には、さほど気にならなかった天候や気温、風速、日射量を気にするようになり、農業の世界に少しずつ染まってきたように思う。初雪はいつ降るのか、冬はどのくらい気温が下がるのか、これが最近の関心事である。